シンカメールマガジン
『 真価と進化 』

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2021.8.18号 VOL.100
13年と、そしてその先へ

こんにちは。株式会社シンカの武田と申します。

この度の秋雨前線停滞による記録的な大雨等により、
被災された方もいらっしゃるかと存じます。
謹んでお見舞い申し上げますと共に、
皆様の安全と、一刻も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

新型コロナウイルス感染の急拡大により、緊急事態宣言の対象地域の拡大、
期限の延長等、今なお、厳しい状況が続いております。
我が家でもこの夏は帰省を自粛し、2年連続、自宅で過ごす夏となりました。

自宅で過ごす時間が多い中、今年は、テレビでオリンピックや甲子園を
見ることができ、多くの選手のみなさんの懸命なプレーから元気を頂いています。
これから開幕するパラリンピックも非常に楽しみにしています。

コロナ禍での東京五輪の開催は、賛否両論がある中ではありますが、
今回は、私の心を震わせた、女子ソフトボール界のお話をご紹介させて頂きます。

それでは、『 真価と進化 2021.8.18号』、最後までお付き合いください。



13年と、そしてその先へ

北京五輪から13年振りに復活した、女子ソフトボール競技。日本代表のみならず、
各国代表選手のスーパープレーが飛び出す熱戦の数々に
ソフトボールの魅力を感じられた方も多かったのではないでしょうか。

私も、過去の五輪での選手の活躍を見て感動し、学生時代ソフトボールを頑張った一人でした。
実は、予選リーグの日本対アメリカ戦、そして決勝戦のチケットが当選していましたので、
日本代表のレプリカユニフォーム、「がんばれ!ニッポン!」と書かれたタオルなど、
応援グッズをしっかり備え、準備万端で迎えた東京五輪でした。
残念ながら、現地で観戦することはできませんでしたが、自宅のテレビの前で
現地さながら、家族でユニフォームを着て、国旗を肩に巻いて応援をしていました。

なぜ、こんなにも熱が入っているのか。それは、東京五輪復活までの13年間の
五輪での戦いを何年も待ち続けたからです。そして、私以上に待ち続けた選手
関係者の方々のそれぞれの13年に込めた想いを考えたら、応援せずにはいられなかったからです。

その13年間、そしてその先へと繋げようと尽力されるソフトボール界の
皆さまのお話をご紹介させて頂きます。

北京五輪直後は、「上野の413球」が流行語大賞に選定されるほどソフトボールが注目され、
国内で行われている女子ソフトボールリーグの試合に連日多くの観客が集まりました。
しかし、人気はそう長くは続かず、五輪翌年の春からのリーグ戦から、
徐々に観客が減り、メディアの取材も減っていったといいます。

五輪競技でなくなった為に目標を見失ってしまい引退された選手や、現役を続けた選手の中には
暗いトンネルの中を走っているようだったと表現される方もいました。五輪復活により、
引退後、現役復帰する選手が各国に存在するほど五輪への想いが強いことが分かります。

今回、アメリカのエース投手として活躍された、モニカ・アボット投手の13年にも
ドラマがあります。アボット投手は、北京五輪でも同じく上野投手と戦っていました。
北京五輪前まで3大会連続で金メダルを獲得していた、絶対王者のアメリカは、
日本に敗れ、本当に悔しい想いをしていた中、同じように目標を模索していたアボット投手は、
五輪翌年から、日本企業に所属し、日本リーグで活動することにしたのです。
国境を越えて、再びソフトボールを盛り上げたいと考えたそうです。

アボット投手の加入により、チームは低迷期を脱し、今ではリーグ優勝を争う
チームにまで成長され、日本全体が強くなったのも、アボット投手をはじめとする、
日本で活動されている海外選手のおかげだと、よく言われています。

アボット投手は、2大会連続の銀メダルとなり、悔しさあふれる中とは思いますが、
表彰式の後、アボット投手から歩み寄り、上野投手に「13年間ソフトボール界を
一緒に引っ張ってきてくれてありがとう。おめでとう。あなたとの勝負は楽しかった。」
と、お話しされたそうです。試合後、ソフトボール復活の為に共に尽力されてきた、
アメリカと日本の代表監督同士が、互いに称えあい涙を流していた姿も印象的でした。

野球・ソフトボール競技は、次のパリ五輪では除外が決まっており、
2028年ロス五輪以降の復活についても、見通しは立っておりません。
野球・ソフトボールが正式種目から除外された理由の一つに、日米などの
一部主要国以外の国々(特に欧州)で普及度が高いとはいえないことがあがっているようです。

北京五輪後、ソフトボール関係者の皆さまは、ソフトボール普及のため、
ヨーロッパやアフリカ等、10年以上各国での普及活動を多くされていました。
それでも、なかなか五輪の正式種目として採用されない現実があります。

もし、復活したとしても今から7年後です。各国の代表選手たちは自分のためだけではなく、
未来の子供たちのため、ソフトボールを頑張る若い世代の為に、世界にソフトボールの
魅力をアピールするという、並々ならぬ想いを抱えた東京五輪が閉幕しました。

2028年のロス五輪での復活を目指しつつも、北京五輪の後のようにならないよう、
五輪に頼らなくても、盛り上がる日本女子ソフトボールリーグを作っていく
必要があると構想され、来春からは新しく『JDリーグ』というものが開幕します。
元代表監督の宇津木妙子氏は、「新リーグに強い選手を集めてヨーロッパサッカーのように
世界の最強リーグにするのも面白いかもしれない。」とお話しをされています。
全国で試合を展開されるリーグ戦、現地に行けない時はネットで
LIVE配信されるので、引き続き応援したいと思います。

世界野球ソフトボール連盟(WBSC)により、2018年には『Baseball5』という
5人で試合が行われる新しいスポーツが考案されました。ボール一つあればでき、
バットもグローブも必要ありません。試合も内野ほどの広さで行われるため、
設備や道具が不足している地域や人口密度の高い地域でも、気軽にできます。
野球・ソフトボールという、4つのベースを使うダイヤモンドスポーツと
コンセプトをまずは理解してもらうための普及活動としてプレーされてきました。
近年、新たなアーバンスポーツとしての価値が加わり、急速に世界に普及され、
2026年のユースオリンピックの公式種目に追加されたそうです。

東京五輪から、そしてその先へと繋げるように、関係者様のご尽力により、
新リーグの開幕や『Baseball5』という新たな取り組みをされていることを知り、
目的・目標をぶらさずに一生懸命に頑張っていく中で、時には、
視点や攻め方を変えて前に進んでいくことの大切さを感じました。

世の中には、自分たちではどうにもできないことも多くあると思います。
どうにもできないから諦めるのではなく、ソフトボール界の様に
私も前を見続けて歩んでいきたいと思わせて頂ける出来事でした。


編集後記


ソフトボールのお話、お付き合い頂きありがとうございました。
想いが強く、長文となってしまいましたこと、お許しください。

『Baseball5』を知った時、ダイヤモンドスポーツの普及に喜んだ気持ちと共に
ソフトボールではなく、『Baseball5』が五輪競技になってしまうのではないか。
と、正直、複雑な感情を抱きました。

ソフトボール経験者の私としては、ソフトボールが復活してほしいものの、
なぜ、男子野球・女子ソフトボールだけで、女子野球や男子ソフトボールは
五輪競技ではないのか、という気持ちの方もいらっしゃると思います。
『Baseball5』は男女混合でプレーすることが想定され、ルールが
作られているという背景からも、良い折衷案なのかもしれないですね。

いつかまた、ダイヤモンドスポーツを五輪で見られる日を楽しみにしたいと思います。
そして、『Baseball5』、機会があればぜひ、体験してみたいと思います。

それでは、次回もお楽しみに!

武田 圭