シンカメールマガジン
『 真価と進化 』

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2023.6.14号 VOL.189
敢えてしないという選択

こんにちは。株式会社シンカの稲村と申します。

先日、大手町自動車メーカーと私の地元の町とが「電気自動車を活用した
ゼロカーボン及びSDGs達成に向けた連携協定」を締結したというニュースを見ました。
1990年に私の地元には「空気神社」という空気をご神体とした神社が出来たのですが、
キレイな空気という共通項で空調メーカー1社とはだいぶ前から提携しており、
昨年11月から もう1社とコラボレーションスタート。そして今度は自動車メーカーと、
我が町に時代が追い付いてきたと言ってはおこがましいですが、
誇らしい気持ちで記事を見ておりました。

そんな記事に必ずと言っていいほど映り込んでいるキャラクターがいます。
桃色ウサヒ。私の記憶では、我が町の“非公式”キャラなのですが、これほど
公式な記事に載っているという事は、公式キャラになったのかなと気になって調べてみました。

それでは、『 真価と進化 2023.6.14号』、最後までお付き合いください。


敢えてしないという選択


現在の「桃色ウサヒ」の立ち位置を調べてみると「非公式PRキャラクター」のままでした。
とはいえ、役場の担当者もついており、運営は官民協働とのこと。

ご当地PRキャラクターは、公式と非公式に大別されます。
公式の代表格が「くまもん」、非公式のそれが「ふなっしー」といったところでしょうか。
私は、"非公式""非公認"は、まさにキャラ付けのためのキャッチフレーズの様なものと思っていました。
縛られていない感じでカッコいいとか、こんなに露出していてまだ"非公認"って
自虐的で面白いとか。「ふなっしー」のイメージの影響だと思います。

あらためて言葉をきちんと調べてみると、そりゃそうだという区別がありました。
"公式"という言葉は、公の決まった形式や、公の手続きに従って物事を行うことについて使われます。
PRキャラクターでいえば、当初から自治体が広報活動として税金でつくったキャラ。
当初は民間がつくり、後から自治体が"公認"した場合でも、
運営が完全に自治体に移った場合、それは"公式"となるでしょう。
"公式"の方が安定し、言葉の響きで格上のように感じられるので、成れるのであれば
"公式"になった方が良さそうに思われますが、単純にそうとも言えないようです。

自由度の高さが"公式"にならない大きな理由と言えるでしょう。
自治体から委託しての活動でも、非公式キャラクターとして位置付けているため、
役所や議会等のルールに縛られずに様々な活動を自由に進めることが出来ます。
「桃色ウサヒ」の場合、住民から意見を聴き、それを還元するという役割も担っており
住民がウサヒと一緒に町を育てているという感覚を味わえるという側面もあるとのこと。
お役所が用意した"公式"キャラでは、そうはいかなかったのではないかと思われます。

また、「桃色ウサヒ」の写真・イラストの利用は商用・非商用を問わず原則無料であり、
非商用の場合は申請不要で、、二次創作も推奨しています。
敢えて縛りを設けないことで、多くの人との協働を生み出す情報発信企画となっているのです。

商標登録や意匠権で保護してしかるべきと思っておりましたが、
特性、目指す在り方によっては、敢えてそれをしないという選択もあるというのは
目から鱗でした。

今夜最終回をむかえるドラマ『それってパクリじゃないですか?』で
ケンタッキーフライドチキンが製法の特許を取らない理由が紹介されていました。

特許を取ると製造方法などを守れるけど、世の中に公開しなくちゃいけない、
そうすると他の企業が真似して、より美味しいものを作ってしまう可能性がある。
それをされないために、あえて特許を取らずに作り方を隠すというもの。
特許というのは、ある意味、諸刃の剣であると。

これにも、なるほどと思いました。

このドラマでは特許出願しなかったことがピンチを招いてしまい、見極めが
非常に難しいことであることも知ったのですが、「敢えてしない」という
選択肢もあるのだという事を頭の隅に置いておくのは、考えの幅を広げるために
有効ではないでしょうか。

<参考>
山形県朝日町ホームページ 桃色ウサヒ特設サイト
https://www.town.asahi.yamagata.jp/usahi/index.html/


公益財団法人 東京市町村自治調査会「先進事例からみたご当地キャラクター活用のポイント」
https://www.tama-100.or.jp/cmsfiles/contents/0000000/466/3.pdf/


編集後記


「パクリ」と「パロディ」「オマージュ」の違いについても考えてみました。
パクリは、あくまで模倣や盗用が主な目的ですが、一方、
パロディやオマージュは、作品への愛やリスペクトがあるとよく言われます。
私は、それにプラスして「粋」であるかどうかの違いもあると思います。
両作品が活きるので「活き」とも言えるかも知れません。
最近知ったのですが、和歌の本歌取りってとても粋ですね。知識が無いと気付けないことも含めて。
ドラマ『ラストマン』での福山雅治さんのセルフモノマネも粋と余裕が感じられて
実に、おもしろい。

それでは、次回もお楽しみに!

稲村 祥子