2019.09.04号
「拡大する経済」からの転換
こんにちは。株式会社シンカの新井と申します。
人間の寿命とはおおよそ50~80歳です。
これまでの人類の歴史からみると一人の人間が生きる期間はとても短く
私たちは、常に「今」を最大の危機と捉えがちですが
これまでの歴史の中で、現代と同じ問題を抱える時代はあったのでしょうか?
それをどう乗り越えてきたのでしょうか。
今回、「問題」として取り上げられることが多い人口減少を
「希望」と捉える『人口減少社会という希望』(*1)という本をご紹介します。
歴史を大いなる教科書として振り返ってみましょう。
それでは、『 真価と進化 2019.9.4号』、最後までお付き合いください。
「拡大する経済」からの転換
■現代社会の状態は、人類史上3度目のサイクル
人類の歴史は「拡大・成長」と「定常化」という視点で見ると
3つの大きなサイクルを見出すことができる。
各段階において
前半の「拡大・成長」フェーズでは「物質的生産の量的拡大」があり
後半の「定常化」では「内的・文化的な発展」と言える時代を
迎えていたのではないかと思われる。
【1】狩猟採取社会
「拡大・成長」:狩猟採取の道具と技術の発達
↓
「定常化」 :装飾品や絵画などの芸術作品が大量に出土する
「文化のビックバン」と名付けられる現象が発生
【2】農耕の成立
「拡大・成長」:土地の開拓と安定的な食糧供給
↓
「定常化」 :仏教や儒教、ギリシャ哲学などの
普遍的な原理を追求する思想が世界各地で勃興する現象
※なお、「定常化」の時期には、ギリシャや中国では森林破壊などの問題が
深刻化していたことが明らかになっている。
【3】産業化・工業化社会
「拡大・成長」:生産性の飛躍的向上と富の蓄積
↓
今、第三の定常期への移行期ではないか?
■3度目の「定常化」の時代
「成長・拡大」の時代は、
[東京は進んでいる、田舎は遅れている]というような
1次元的な尺度が優位となり、それを競い合う。
一方、「定常化」の時代は、3次元的な「空間」、
つまり、地域・コミュニティに回帰していく時代である。
■「生産性」の概念の再定義
筆者は、【3】のサイクルにおける内的・文化的な発展とは、
「経済」の「相互扶助」的な要素を前面に押し出した
「コミュニティ経済」を生成していくことだと言っています。
その成立のための一つとして、「生産性」概念の再定義が必要だと述べています。
日本がコミュニティ経済を推し進める場合、
それはつまり「サービス化戦略」の要素を含んでいると言える。
というのも、モノは場所や国境を越えて自由に移動するが
それとサービスを比較すると(特に対人サービス)は、移動しにくいもので
本質的にローカル、地域で循環するという性格を持つ。
これまでは、<拡大・成長期=資源余り>であったため、
「できるだけ少ない人で多くの生産を上げる」ことが重要だった。
しかし、拡大期に資源を消費した結果、定常化は資源不足の状態にあるので
逆に資源は節約し、「人」を活用する経済にすることが重要になる。
こうした場合、福祉・教育など人手がかかる「労働集約的」分野が
"生産性が高い"ということになる。
さらに言えば、人と人とのコミュニケーションや「ケア」そのものが
そもそもポジティブな付加価値を持っていることも加味し
これからの時代、「効率性」から「ケア充足性」を生産性の概念として
考えるべきである。
(*1)広井良典(2013)『人口減少社会という希望』,朝日新聞出版.
編集後記
日本生産性本部の「平成31年度 新入社員働くことの意識調査結果」によると
今年の新入社員の働く目的の1位は「楽しい生活をしたい」(39.6%)でした。
「自分の能力をためす」(10.5%)は長期にわたって減り続けています。
「今時の若者」論ではないですが、私は歳離れた方の受け入れがたい
価値観に触れると不愉快に思うときもあります。
しかし、幼いころから今の社会に生きてきた人間の考えだと思うと
そちらのほうが何か一理あるのではないか(そう考えざるを得ないのか?)、
もしくは、もっとポジティブに言うと、これからの時代の
新しい考え方なのではないかという思いもします。
それでは、次号をお楽しみに!
参考URL:
https://activity.jpc-net.jp/detail/add/activity001566.html
(新井 千春)