2019.09.25号
原点に立ち返り 且つ 人のやらないことをやる
こんにちは。株式会社シンカの稲村と申します。
9月の連休は皆様どのように過ごされたでしょうか。
山形の親戚や友人からは、台風を前に稲刈りに大忙しという話も多く聞きました。
芋煮会、昨年ご紹介した寺フェスやワインまつりと魅力的なイベントも
盛り沢山だったので、手伝いがてら私も帰省しようかと考えたのですが、
夏の帰省で散財(いえいえ、地域貢献です)したので、この度は泣く泣く諦めました。
今回は、その夏休みに訪問した水族館の奇跡の物語をご紹介したいと思います。
それでは、『 真価と進化 2019.9.25号』、最後までお付き合いください。
原点に立ち返り 且つ 人のやらないことをやる
その水族館は、山形県鶴岡市にある加茂水族館。
クラゲの水族館としてNHKの番組などでも紹介されたので、
聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
大変な人気で休日には入館までに2時間待ちという報道もあります。
地元のニュースもチェックしている自分にとっては、奇跡の復活を果たした超有名な
施設だと思っておりましたが、東京で周りに話してみると、知っている人は0人…。
地元の贔屓目かも知れませんが、その復活劇を知らないのはもったいない
と思ったので、ご紹介させていただきます。
※数々のエピソードを割愛しきれず長文になってしまいましたことをご容赦下さい。
加茂水族館は、およそ90年前に地元の有志者が出資して始まった小さなものですが、
1960年代には、年間20万人が訪れる県内有数の観光施設として賑わいを見せていました。
ところが、1997年に隣県に水族館がオープンした影響などもあり、年間入館者数が9万人まで激減。
閉館の危機に直面してしまいます。
当時の館長は、起死回生を狙って試行錯誤するも、立て続けに失敗。
当時の流行に乗って、水族館なのにアライグマやミーアキャット、
アカゲザルの展示を始めるも、全く集客は伸びず。
館長の家や土地を担保に借り入れを行い、一大決心でラッコ展示を始めたものの、
ブームには一足遅く、これまた集客は伸びず。グルメなラッコの餌代が嵩み、
かえって経営を圧迫してしまったりと迷走が続きました。
自分たちのアイデアに自信を持てなくなっていた状況の中、
親会社の意向で『生きたサンゴと珊瑚礁の魚展』という企画展を開くことになりました。
その準備をしていた時に、偶然、サンゴの水槽に3~4ミリの小さな生き物が
30個体程泳いでいるのを見つけます。それがサカサクラゲの赤ちゃんでした。
餌を食べさせ、500円玉くらい大きくなった段階で展示をしてみたら、
思いがけなくお客様に好評!「キャー、かわいい」という、もう何年も
聞いたことがなかった歓声に、館長はじめスタッフ達は手応えを感じました。
近くの海から別の種類のクラゲも捕ってきて、数種類のクラゲを展示し続けていると
入館者数は僅かに増加に転じていきました。
そこで「クラゲの展示数で日本一を目指す」という目標を掲げることにしました。
具体的な目標が出来るとスタッフ達のモチベーションも上がるものです。
しかし、壁はつきもの。
今度はクラゲの寿命の短さという壁にぶち当たります。
寿命の短いクラゲの展示を繋いでいくには、自分たちで繁殖させなければならないのです。
繁殖のノウハウがほとんど無い上に、顕微鏡さえ用意出来ないお財布事情の中、
ルーペなどを代用し、我流で地道な研究し続けた末、国内で初めて
スナイロクラゲの人口増殖を成功させるに至りました。
さらに、別のクラゲの繁殖にも続々成功!
手に入れたのは繁殖の技術だけではありませんでした。
増殖の過程でクラゲの驚きの生態を次々と発見。
それを展示するアイデアも次々と沸いてきました。
「分からないことが分ってくると楽しい。ゾクゾク、ワクワクする」と
毎日楽しそうに仕事をするスタッフを見て館長は思います。
「人気の生き物を連れてくればお客さんが来る」という考えは大きな間違いではなかったか。
「生き物と向き合うことで感じた興奮や驚き、それをお客様に伝えること」が
水族館の原点ではないのか。
人まねではなく、お客様の身になって魅力あるもの、喜んでもらえるものを
考えるべきだったが、その本質の本当の意味を自分は分っていなかったと。
そして、ついにクラゲの展示数日本一にのぼりつめました。(当時12種類)
しかし、期待したほどは来館者数は伸びませんでした。
資金不足で展示スペースや内容が貧相で、まだまだリピーターや
遠方のお客様を呼べるまでの魅力はなかったのです。
さぁ、ここからどのようにして起死回生の大逆転が出来たのでしょうか。
それは、館長とスタッフとの他愛もない話がきっかけでした。
「昔漁師をやっていたとき、クラゲばっかり掛かる時があって、頭にきたから食べてやった」
館長はハッとしました。「食べることもクラゲの魅力を伝える方法ではないか」
自分が釣り吉だった少年の頃、釣った魚を食べるときに感じた不思議な高揚感、
その味を知ることで魚への親近感が増したことを思い出したのです。
食用のクラゲは近くの海で捕れるため資金の心配も要りませんでした。
試行錯誤を繰り返し、クラゲの刺身や、クラゲラーメンを開発。
試食会を開いたところ、“展示する生き物を食べる”という奇策が当たり、大盛況。
館長は思いました。「常識を超えるくらいじゃないと客の心には刺さらない」
意表をついたユーモア、人のやらないことを率先してやらなければ
魅力的であり続けることは出来ないと。
この考えは展示方法にも反映させました。
クラゲの試食会が注目された今こそと思い、勝負をかけて館内改装を行い、
クラゲの群衆美が映える巨大水槽を設置したのです。
その迫力に、大人も子供も歓声をあげて喜んでくれました。
自信がつき、勢いに乗り、さらなる試みを続けていきます。
増殖の過程で発見したクラゲの生体の不思議を積極的に展示していったのです。
共食いする様子展示したところディープな生態にお客様は興味津々。
刺激を受けると発光するオワンクラゲは、なかなか発光させることが出来ずにいましたが、
おりしも、オワンクラゲ由来の研究でノーベル化学賞を受賞された下村脩教授の助言を受けて、
発光させることに成功。
他にも個性あふれる展示を続けていくうちに、山形の片田舎に全国から
人が集まるようになり、9万だった年間来場者数は、2014年には71万人に!
常時展示されているクラゲは60種類以上、
レストランの売り上げはクラゲメニューが出来る前の4倍だそうです。
生き物と向き合うときの興奮を伝えたいという原点に立ち返り、
自分がワクワクするような、人のやらないことをやった結果です。
「迷った時こそ、原点に立ち返る」最近自分でも大事だと感じていたことが、
成功例として示され、遠回りや間違いではないと自信が持てました。
皆さんはいかがでしょうか。
※参考:NHK『逆転人生』
編集後記
加茂水族館を一緒に訪れた友人も、奇跡の復活劇を知っていたので、
感慨深く展示物を見て、レストランのクラゲメニューも堪能してきました。
休みの谷間だったからか、入場制限もなかったので、見ごたえのあったクラゲを
リピートしながら4時間ほどかけて館内を2周半。まるで自由研究の為に
訪れた子供のように回ってきました。
映画村にも行ったのですが、そこでも、ちょん髷かつらを被って写真を撮ったりと
たっぷり楽しんでリフレッシュしてきました。
その友人とは久々に会ったのですが、かつて 地元イベントに前日夜から並んだ同志でした。
物事を楽しむ姿勢が今でも似ているのです。これも「三つ子の魂百まで」?なんて言いながら、
いやいや、普段の仕事では忘れてしまっているなぁと反省。
ワクワクして楽しむ姿勢を仕事にも活かしていきたいと思った夏でした。
それでは、次号もお楽しみに!
(稲村 祥子)