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『 真価と進化 』

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2019.11.13号
建物の寿命は何によって決まるのか?

こんにちは。株式会社シンカの四戸です。

先日、メルマガでも度々取り上げております「オトナの社会科見学」にて
東京都・青梅市を視察研修して参りました。

「社会問題を解決することで、持続可能な社会を創造し、
私たち一人ひとりの幸福度向上を追求する」という弊社のミッションに向けて
ヒントを得ようと街を散策する中で出会ったのが
江戸時代の豪商の旧宅である「旧稲葉家住宅」です。

「旧稲葉家住宅」のおよそ400年残り続けた畳や母屋の大黒柱をみて、
ふと、私たちが使用している建物の寿命はどの程度なのか?
時代を超えて住宅を残すことは不可能なのか?
疑問を持ち、調べてまいりました。

建物のみならず、私たちの「モノ」に対する価値観について
考えるきっかけにしていただけますと幸いです。

それでは、『 真価と進化 2019.11.13号』、最後までお付き合いください。


建物の寿命は何によって決まるのか?


一般的に、「住宅がどれくらいもつのか」を示す指標は2つあります。

・建物の寿命…建物が実際に存在した年数(決まるもの)
・建物の耐用年数…使用を予定する年数(減価償却の年数/決めるもの)

【日本の建物の平均的な寿命】
RC造専用住宅 56.76
RC造共同住宅 45.15
鉄骨造専用住宅 51.85
鉄骨造共同住宅 49.94
鉄骨造工場  45.81
木造専用住宅 54.00
木造共同住宅 43.74

「木造住宅は30年しかもたない」と耳にすることがありますが、
建物の構造による寿命の差異はほとんどないということが分かります。

では続いて、日本で定められている建物の耐用年数についてご紹介いたします。

【日本の建物の耐用年数】
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 50~60年
れんが造、石造又はブロック造 45年
金属造(骨格の肉厚が4mmを越えるもの) 34~40年
金属造(骨格の肉厚が3mmを越え4mm以下のもの) 24~30年
金属造(骨格の肉厚が3mm以下のもの) 20~26年
木造又は合成樹脂 24年

人為的に「決めるもの」である耐用年数においては、
金属造りの一部と木造建築が20年程度で推定されており、
実際の平均寿命とは乖離しています。

これは耐用年数が、建物を構成する各部分の耐久性(並びに償却額)を想定して
求めた数値であることに関係しています。

耐用年数は「固定資産・不動産取引をする上での建物の評価指標」であるため、
建物の各部分の劣化・損傷と減価償却額を加味して、耐用年数を算出する
方法は一見、筋が通っているように感じられます。

しかし、本来長きにわたって使用する建物においては
耐用年数の短い部分は傷みを修理しながら使うというのが自然な考え方です。
瓦屋根の瓦が一部割れてしまったとしても、建物それ自体の耐久性には
大きな影響を与えません。
むしろ、建築の主要構造である柱や梁などの材料がどの程度の耐久性を
持っているかで耐用年数を考えるべきであるといえます。

耐用年数は各部分の減価償却額の合計額を建物全体の価格と引き合わせて
計算し、決定するため耐用年数が極端に短い部分があるだけで、
全体の年数は引き下がってしまうというわけです。


早稲田大学の小松教授は
こうした出来事が生まれた背景の一つに、高度経済成長期に形成された
日本人の建物に対する価値観があるのではないかと論じています。

一部を引用して、ご紹介いたします。


高度成長によって増大した富は最終的には土地投資へと流れ込んだと思われる。
土地価格は永久に上がりつづけるという、
いわゆる土地神話が生まれることになった。
都市部では不動産取引といえば土地取引であって、
そこに建っている建物は少し古くなるとマイナス評価しかされないという状況、
すなわち土地本位主義ともいえる状況が生まれ、
それは現在まで続いている。
土地の価値が建物に比べて相対的に高いという状況は、
ひとつの建物を使いつづける意欲を失わせ、
特に戸建て住宅の場合には土地の価格が高い地域ほど、
不動産取引の発生が即建替えにつながる状況が多く見られるように思う。


「建物の価値はいずれなくなる」という価値観により、
耐用年数を越えてもメンテナンスを続ける風土や
家が古くなってきたとしても、維持をして使おうという志向性が
育まれてこなかったのではないかと考えられます。

自然災害の多い日本において、耐震性・耐久性は非常に重要な観点だと思います。
しかしながら、致命的でない傷みや陳腐化に対しては私たちの価値観次第で
それは、「味」にも「愛着」にもなるのではないでしょうか?
一つのものを大切に長く使い続けることに宿る生活の豊かさについて
改めて考えてみるきっかけとなりました。


<参考>
財務省「新成長戦略における国有財産の有効活用について(平成22年6月)」
https://www.mof.go.jp/national_property/topics/arikata/220618_01.pdf

編集後記

青梅市ではこれから紅葉の見ごろを迎えるそうです。
寒暖差が激しく、体調を崩しがちな季節ですが、
紅葉を美しく彩る条件と言われているのが

・昼と夜の寒暖の差があること
・適度な雨や水分があること
・日中天気がいいこと

なんだそうです。皆さんも十分に寒さ対策をした上で
紅葉狩りに出かけられてはいかがでしょうか?

それでは、次号をお楽しみに!

(四戸 裕歩)