2026.08.05号
無謀な交渉
こんにちは。株式会社シンカ代表の田中です。
2016年秋、上場親会社オーナーから、
「今後シンカをどうするかは、田中の想い次第だと思う」
という発言を受けて、私は1週間後に想いを伝える約束をしました。
もちろん、腹の中は決まっていました。MBOしたいと。
ところが、冷静に考えてみると、
20代は死ぬほど働いて、死ぬほど遊んでいたため、貯金はほぼゼロ。
会社を買い取るお金などありません。
でも、なんとかする!今しかない!という想いだけは変わりませんでした。
下手なことを言って、オーナーに嫌われれば、
自分がクビになり、従業員は路頭に迷うことになります。
かといって、このチャンスを逃せば、このまま魂の抜けた会社になっていき、
やがて気概のある人材も会社を去り、どちらにせよ会社は消滅の道を辿ることになると
私は感じていました。
だから、絶対に失敗できない。
何をどう伝えたらうまくいくか、皆目想像もつかなかったので、
私は知人の経営コンサルタントの方に相談しました。
「~という状況にあるのですが、MBOなんてできるものですかね?」
すると、経営コンサルタントの方から驚きの回答が返ってきました。
「はい、簡単ですよ。結局は買収金額の問題だけです。」
な、なんと。本当にそんなものなのか?!
そんなに簡単な訳がないと、私は食い下がって質問しました。
すると、以下の助言が返ってきました。
「田中さんのおっしゃるとおり、一番難しいのは、
オーナーが、『よし、頑張れ、応援してやる!』と思ってもらうことです。
オーナーも、一代で会社を上場まで導いた、本物の経営者です。
サラリーマン社長と違って、独立・起業に対しては理解があって、
気持ちはわかってくれるんじゃないかと思います。
なので、まずは田中さんの想いを全力でぶつけることが大事だと思いますよ。」
なるほど、たしかにそれは可能性があるな、と私は思いました。
しかし、買収資金がない。この問題はどうすればいいのか?と質問しました。
「そんなのは、あとで何とでもなります。重要なのはオーナーと田中さんが
買収の意向について合意していることです。そこが確定的でなければ、
そもそも金融機関は動いてくれません。」
え~!そういうものなのか???
本当かわかりませんが、何も持っていない私は、想いひとつしかありませんでした。
それから1週間、日々の仕事が終わってから、連日連夜、想いを伝える準備をしたのでした。
編集後記
私が現在の年齢で同じ状況に置かれていたら、同じ行動に出ただろか?
と時々考えることがあります。
当時の私は35歳。
今もまだ未熟者ですし、老いぼれたつもりは全くありませんが、
10年の月日を経て、もう少し世の中の仕組みの理解は深まっています。
もしかすると、断念していたかもしれません。
すると、私の人生と従業員の人生は、全く違うものになっていたでしょう。
無知だからこそ、無謀な賭けに出られた側面はあります。
そして、無謀なことに対して、自分自身が鈍感(自分の想い重視)な性質も
結果的には功を奏したのかな、とも思います。
それでは、次回もお楽しみに!
執筆者プロフィール
株式会社シンカ
代表取締役社長
田中裕也
1981年生まれ。岩手県二戸市出身。一橋大学商学部卒。2004年、新卒でシンカに入社。
上場企業を中心に20年以上採用コンサルティングに従事。訪問社数は2500社を超える。
2014年、突如代表取締役を拝命。経営改革を経て、2017年にMBOを決断。
自社の経営改革の実体験から、現在は中小企業向けの組織改革・人事制度改革・
事業計画策定・新規事業立ち上げ、事業承継等の支援や、
持続可能な社会を目指して地方で宿泊業へのチャレンジも実践している。
2025年、社会保険労務士試験に合格(登録準備中)。