シンカメールマガジン
『 真価と進化 』

SHINKA Mail Magazine

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2023.12.27号 VOL.215
廊下のゴミは拾うな!?

 こんにちは。株式会社シンカ代表の田中です。

 先日、中央アルプスと南アルプスに挟まれた絶景を擁する
長野県駒ケ根市へ2泊3日のワーケーションに行ってきました。

 駒ヶ根といえば、桃鉄で有名なソースかつ丼と養命酒工場。
期待通り、ソースかつ丼の昼食から始まり、
駒ヶ根市役所の方から町のご説明、長野最強スーパー「つるや」で買い出し、
合宿所「ふるさとの家」、青年海外協力隊(JICA)のプチ研修、
市民活動支援センター「ぱとな」でワーク時間、伊藤市長はじめ皆さまとの夕食、
ディープな飲み屋「越百(こすも)」の女将さんの芸人並みのトーク、
マルスウイスキー、光前寺、養命酒工場、日本アルプスを眼前にサウナ、
等々、とても貴重な体験をさせていただきました。

 特に記憶に残っているのが、JICA帰国隊員の林さんのお話。
エクアドルの高度4000m超えの高地の村へ派遣された時のこと。

 林さんが派遣先の学校で、廊下に落ちているゴミを拾ったところ、
「君はどうしてゴミを拾うんだね!」と現地の人から怒られてしまいました。
はてさて、どうしてでしょうか?

 それでは『 真価と進化 2023.12.27号 』、最後までお付き合いください。

廊下のゴミは拾うな!?


 私はJICAさんの帰国報告会に参加して、体験談を伺ったことはあるものの、
派遣前の研修所は、福島県二本松市と長野県駒ケ根市の2ヵ所にあることを
全く知りませんでした。

 さらには、JICA帰国隊員のいわゆるOB・OG組織
「青年海外協力協会(JOCA)」の本部が、駒ヶ根市にあるとのこと。
民主党政権時代の事業仕分けでJICAがやり玉にあがったことから、
派遣先での経験を、もっと国内に還元して認めていただく必要がある
との反省から、国内での活動により力を入れるようになったそうです。

 聞くところによれば、1軒目のソースかつ丼屋も、宿泊先の合宿所も
JOCAの方が運営しており、コワーキング、懇親会にもJOCAの方がたくさん。
なるほど、JICA関連の人々が町に活力をもたらしているんだなとわかりました。

 さて、本題に戻ります。

 学校の廊下のゴミを拾った林さんは、なぜ怒られたのでしょうか?
一緒に講義を聞いていた方々は海外経験も豊富で、大体わかる様子。
海外に1回しか行ったことのない私は、皆目見当もつきません。

 答えは、「掃除の仕事をしている人の給料が減ってしまうから。」

日本と異なり、学校の清掃は教師や生徒が自ら行う習慣がなく、
大体、外注しているとのこと。さらには、学校の運営予算も不足しているため、
毎日定期清掃が入るのではなく、「汚れたら都度発注する」スタイルだとか。
よって、ゴミを拾ったり、掃除をしてキレイにしてしまえば、
発注回数が減ってしまって、清掃員の方の給料が減ってしまうため、
可哀そうだというのが理由だというのです。

 日本が敗戦直後の焼け野原だった時代には、同じようなことが
あったのでしょうか?私にはそうは思えません。
日本の文化では、気づいた人がゴミを拾い、掃除をし、整えるのが
「当たり前」だったのではないかと思います。

 今年11月には、駒ヶ根市のお隣、伊那市にある
社員の幸せを追求する経営で有名な「伊那食品工業」さんの
視察研修に参加しました。

 会社の命令された義務でもなく、手順も役割分担も決められないないのに、
朝8時頃になると、社員がフワッとやってきて、フワッと庭のお掃除を始める。
朝礼の時間になると、フワッと社員が集まってきて、ビシッと整列する。
朝礼の開始や解散の号令はゼロ。それが伊那食品社員の「当たり前」。

 この日本の「当たり前」の感性は、いくらお金をかけても、
テクノロジーが発達しても、簡単には形成することができない
最大の無形資産なのではないかと感じました。

 さあ、誇り高く、年末の大掃除に取り掛かりましょう!


編集後記


ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとガザの戦争、
新型コロナが残したソーシャルディスタンスの習慣、
ビッグモーター不正、福島第一原発の処理水放出、
旧ジャニーズ事務所、旧統一教会、政治資金パーティー裏金疑惑。
世の中の出来事には、見る角度によって全く違って見えるはずです。

大切にしたい「当たり前」は習慣としつつも、
凝り固まった頭で一側面から捉えてしまわぬよう、
様々な立場の人の話を聞き、現地に出向いて、知識を学んで、
柔らか頭な人間でありたいと思います。

本年もご愛読いただき、誠にありがとうございました。
良い年をお迎えくださいませ。

田中 裕也