2025.04.23号 VOL.280
事実に基づいた働き方改革
こんにちは。株式会社シンカ代表の田中です。
この1年間、組織内部ヒアリング調査のお仕事を行う中で、
「ホワイト化の弊害」とも呼ばれる現象が各組織で起きています。
労働時間規制やハラスメント対策が厳格化したことによって、
「まったり働く社員」が増えており、そのしわ寄せが責任世代に
のしかかっている現象です。
さて、弊社も2014年から企業存続の危機感から働き方改革に取り組み、
残業時間30%削減、利益10倍にした経験が、今では懐かしく思います。
弊社の働き方改革は、事実に基づいた徹底的なものだったと思います。
今さら働き方改革に悩んでいる企業様は少ないかと思われますが、
経営・事業改革のプロセスとしては参考にしていただけると思います。
それでは、『真価と進化 2025.4.23号』、最後までお付き合いください。
事実に基づいた働き方改革
弊社では、毎年バーンアウトして退職する社員が発生するのが慣例化していました。
とても長く働ける会社ではない、と私は感じていました。
働き方改革に取り組もうと思った時、私は「待てよ?社員が何を思っているか、
その期待や課題に応えなければ意味がないな」と思いました。
そこで、まず社員にアンケートを取ることにしました。
「定時に帰りたい」という声が出てくるかと思いきや、結果は異なりました。
主な不満は、重要度順に以下の4つに分類されました。
①遅くとも21時には帰りたい
②兼務が辛い、人によって業務量が偏在しているのが納得いかない
③社内の申請手続きの手間が煩わしい
④各種人事制度の改善要望
社員の労働意欲が高いことに驚き、それを私の認識のベースとして、
私は毎日21時時点で残っている社員にヒアリングをし、
・今日は何時に帰れそうか?
・あと何の業務が残っているか?
・今日遅くなった原因は何か?
を毎日記録して、全社員に協力を仰ぐメールを送りました。
すると、意識づけはできて少し改善したものの、いつも同じメンバーが
21時過ぎまで残っていることに気づきました。
そこで、毎日記録を取っているメモを分析してみると、
残業の理由は以下の5パターンに分かれることがわかりました。
①「あと5分、10分」パターン
このメールだけ終わったら帰れます!という言い訳。意識の問題と判断。
②「呼び止められて残っちゃった」パターン
管理職からあの資料どうなったの?と言われるパターン。管理職に原因。
③「スポット業務」パターン
提案書作成、会議資料作成、月末締め業務など。業務プロセスに原因。
④「慢性業務過多」パターン
異常に業務量が多い特定のクライアントの問題。体制や取引条件が原因。
⑤「突発型」パターン
トラブル対応、クライアントからの電話など。顧客の理解が原因。
上記の分析を受けて、蛍の光を流したり、20時以降の会議を禁止したり、
業務フローを見直したり、クライアントに理解を求めたり、様々取り組んだ結果、
遅くとも20~21時には帰宅できる状態を実現できました。
今でいうDX化がポイントではなく、ほとんどが経営方針と業務ルール、
そして社員とクライアントの認識の問題であることが大半でした。
慢性的な課題を解決したいとお考えの際は、妙な掛け声や、机上の空論ではなく、
事実に基づいて原因を特定し、重要度を認識、柔らかい頭で解決策を
考えてみてはいかがでしょうか。
編集後記
社長の私が毎日1人で、21時退勤チェックを行っていた時、
一番ショックだったのは、最大の味方であるはずの抜擢人事をしたメンバーから、
「はい?私が帰れないのわかってますよね?
帰れないから帰ってないんですけど?それが原因です。」
という冷たい視線で、鋭い刀のように私の心を切り返してきた時でした。
それでも私は、「早く帰れる結果が出た時には、喜んでもらえるはず」
と諦めませんでした。そのしつこさを見て、次第に私の代わりに
21時退勤チェックを行ってくれる管理職も出てきて、活動は定着しました。
「相手のため」でなく、「自分が罰せられないため」の行動だったら、
私の心も折れていたのかもしれないと、今振り返ると思います。
動機善なりや、私心なかりしか。
それでは、次回もお楽しみに!
(田中 裕也)