2025.05.14号 VOL.283
「受援力」ありますか?
こんにちは。株式会社シンカの稲村と申します。
街路樹のつつじの花も見頃を過ぎ、緑が濃くなってきました。そうすると
まもなく紫陽花の季節ですね。ということは、梅雨の季節ということでもあります。
梅雨は、気圧の乱れや寒暖差、湿度の変化等により、体調を崩してしまう事も多いと思います。
体調を崩したときや、困り事があったとき、皆さんは周りに頼ることが出来ていますか?
今回は、頼るスキル 頼られるスキル「受援力」についてのお話しです。
それでは、『真価と進化 2025.5.14号』、最後までお付き合いください。
「受援力」ありますか?
スポーツの国際大会などで、「日本人のマナーの良さに感動した」
「日本人はとても親切だった」等の評判を知って誇りに思っておりましたが、
昨年10月にアメリカの学術誌で発表された研究によると、日本人は困った状況にある人に
共感しにくく、自分が困っていても周りに助けを求めない傾向があるということがわかりました。
「受援力」とは、読んで字のごとく、助けを求める力のことを指します。
聞いた事はある言葉でしたが、先週のNHK情報番組『あさイチ』で取り上げられており,
学ぶところが多かったので、共有させていただきます。
子供の頃から刷り込まれてきた「人に迷惑をかけてはいけない」「自己責任」という
言葉の呪縛により、困った時になかなか相談できない人が多いであろう事は容易に想像がつきます。
「がんばって一人で成し遂げる」ことが求められ、できないとき「助けて」
「手伝って」と誰かに頼る、SOSを出してよいと学んでこなかったと思います。
『あさイチ』で、困った時に人に相談できるかアンケートをとったところ、
・相談したい:37%
・相談したいが言えない:48%
・相談したいと思わない:15%
という割合で、実に6割以上の人が困っていても人に相談しないという結果でした。
やむを得ず相談しても、罪悪感や劣等感を感じてしまうという方が多いのではないでしょうか。
逆に相談を受けたらどう感じるか?というアンケートでは、下記のような結果が出ていました。
・助けになりたい:51%
・頼られてうれしい:36%
・対応がわからない:8%
・面倒なことに巻き込まれたくない:4%
・迷惑:1%
と、9割近くの人が頼られることに好意的な回答でした。
人に頼れないけど、自分は誰かを助けたいという傾向が見えてきました。
『頼るスキル 頼られるスキル 受援力を発揮する「考え方」と「伝え方」』の著者である
産婦人科医の吉田穂波先生は、海外で暮らしていた時、周りに頼らない方が怒られ
「どうして相談してくれなかったの?」と悲しまれたという経験から、頼ることは悪いことではないと
気が楽になり、過ごしやすくなったと語っておられました。
根性論や精神論では限界があります。人に頼ることは弱さではなく、
今こそ日本人に必要なスキルと言えるようです。
実に、この「受援力」を子供のころから身に着けて欲しいと学校現場で取組みが始まっているそうです。
番組では、都内の小学校で5、6年生を対象に吉田先生が講演とロールプレイングを
行った様子が紹介されていました。子供向けの分かり易い説明が響きました。
尊敬や信頼の気持ちを伝えると頼むほうも頼みやすい。
「ごめんね」や「すいません」じゃなく「ありがとう」の気持ちで。
吉田先生が挙げておられた人に頼るときのポイントをご紹介します。
①声をかけるとき「すみません」と言わない
頼る事は悪いことではなく、むしろ勇気を出して解決しようという強さの表れなので、
「○○さん今いいですか?」など 名前で呼びかけるのがGood
あなただから話したい、頼りたいという気持ちを伝えるのが良いとのこと。
②「ありがとう」のバリエーションを増やす
ありがとうプラス「ホッとしました」「~してくれて心強いです」「励まされました」等
気持ちまで添えて伝えるのがお薦めとのことです。
「頼ることは、相手への信頼と尊敬を示す行為である」ということを大前提に据えておくと
罪悪感や劣等感は薄れると思います。
とは言え、頼って断られた事を考えると、なかなか一歩踏み出せないという事もあると思います。
そんな場合の対策についても、吉田先生は教えて下さいました。
断られた時の副案まで用意しておくと頼るハードルが下がるとのこと。
「どうしてできないんですか」ではなく「どうしたらうまくいきますか」といった
前向き質問で返す事や、断られたとしても、向き合ってくれた事、時間を使ってくれた事への
感謝を伝えて次につなげていくことが大切だということです。
また、頼ることも断られるも消耗することなので、自分を癒す時間を用意しておくと頼り易くなるという事です。
頼るといっても、自分で何もやらないで他人に丸投げするのは全く違う事。
日頃の信頼関係があってこそですね。
≪参考≫
・NHK『あさイチ』2025年5月8日放送回
・医師 吉田穂波さんオフィシャルサイト
https://honami-yoshida.jimdofree.com/%E5%8F%97%E6%8F%B4%E5%8A%9B-%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
編集後記
頼る、相談するの中には、具体的な支援を求めない種類のものもあると思います。
話すことで自分の気持ちや考えが見えてきたり、考えの偏りに気づけたりと、
具体的に何かしてもらえなくても「助け」になります。
そんな種類のものの場合には、AIに相談するという手もありますね。
私はまだプライベートな相談にAIを利用した事がありませんが、
結構寄り添った対応をしてくれるようです。
相互に頼って、負担が偏ることなく、快適に生産性を上げていけたら良いですね。
それでは、次回もお楽しみに!
(稲村 祥子)