2025.05.28号 VOL.285
売上至上主義との決別
こんにちは。株式会社シンカ代表の田中です。
米騒動のニュースが毎日メディアを賑わせていますね。
私も岩手の実家で暮らしていた頃は、米は売るほどありました(笑)
進次郎構文で意味不明なうちにJA改革を成し遂げてほしいと願うばかりです。
さて、今回は弊社が経験した売上至上主義との決別の昔話です。
売上が減ることは恐怖が伴います。
実際行うには、どんなハードルが待ち受けているのでしょうか?
物価高、人件費高騰、人手不足、産業構造の変化などの影響を受けて、
今年に入って、急に多くの企業が変革に着手し始めた印象を受けています。
ぜひその参考にしていただければと思います。
それでは、『真価と進化 2025.5.28号』、最後までお付き合いください。
売上至上主義との決別
2013年、リーマンショックや東日本大震災のダメージが社会的に残る中、
弊社も市場環境の変化、競合先の圧力、燃え尽き退職などにより、
働いても働いても赤字の状態に苦しんでいました。
社員がモーレツに働いても、会社は赤字。不思議でなりませんでした。
社員を楽にして、会社も儲かるにはどうしたらいいか?
まず、私は原因分析をしました。
分析と言っても簡単な話で、サービス別の売上・利益のランキングと、
顧客別の売上・利益のランキングを出しただけです。
ポイントは、それらの利益を計算する際に、社員の人件費や間接費を
適切に配賦して利益を捉えることです。
すると、世の中のどんな会社も当てはまると言われる、
「パレートの法則」が見い出されました。
つまり、上位20%の顧客で、全体の80%の利益を生み出していたのです。
ところが、「売上」上位20%の顧客の中に、大赤字案件が存在しました。
定価で見積もれば本来2,000万円の仕事を、800万円で受注していたのです。
しかも、その案件は、要求が複雑かつ無茶苦茶で、2,000万円どころか
3,000万円以上に相当する労力やトラブル対応経費が発生していたのです。
当時他部門のマネジャーだった私は、「そのお客さんは、すぐに断るべきだ」
と経営陣と担当メンバーに意見しました。
しかし驚くことに、それぞれからこんな返答が返ってきました。
経営「800万円の仕事がなくなったら、利益が下がってしまう」
担当「途中で投げ出すなんて、お客様にご迷惑をかけてしまうので嫌です」
経営も、社員も、「社員(自分)はタダ」だと思っているようでした。
どれだけM気質なのかと。。
翌年、部長に昇進した私は、その大赤字のモンスタークライアントに
2,000万円の見積を提示して、無事契約解除となりました。
そして会社も800万円利益が改善し、三方良しの結果となりました。
もちろん、固定費を回収する水準までは、多少安くても売上を確保
しなければいけないという考え方もあります。
しかし、売上至上主義の企業に潜む本当の心理は、
「売上が下がって、社会的評判が落ちるのが怖い」
「競合他社に負けた気がするのが嫌」
「社員や協力会社に厳しい話をして嫌われたくない」
という、ちょっとしたプライドだったりするものです。
生産年齢人口が加速度的に減少していく時代に、儲からない事業に
貴重な人材を充てている場合ではありません。
値上げするか、ビジネスモデルを見直すか、さもなくば撤退するか、
社員のために、社会のために、売上至上主義から決別しましょう。
編集後記
原因分析をした時に、実はもう2つ、面白いパレートの法則を見つけました。
①利益の8割は、東京23区内に本社があるクライアントで構成されている
→郊外へのプッシュ営業はほぼ無意味。
②利益の8割は、お問合せ・知人からの紹介案件が占めている
→テレアポ営業はほぼ無意味。
※当時は東証一部上場企業を対象にしたビジネスモデルのみでしたので、
このような結果となり、現在は異なります。
客観的に考えれば当たり前の結果なのですが、
渦中にいる当事者は意外と気づかないものですね。
簡単な分析でも、切り口を変えれば、大きな気づきが得られるものです。
それでは、次回もお楽しみに!
田中 裕也