2025.10.15号 VOL.305
株主は強し
こんにちは。株式会社シンカ代表の田中です。
日頃、株主の存在を意識して働いている人は多くないと思います。
私自身も、歴史の教科書で「所有と経営の分離」と習った程度で、
あまり意識したことはありませんでした。
しかし、弊社は20年ほど前にベンチャーキャピタルから出資を受け、
上場を目指していた時代がありました。
当時は新人だったので詳しいことはわかりませんが、
「経営陣は、VCから相当プレッシャーを受けている」と聞いたことがあります。
そして2007年、弊社は買収され、子会社の立場となりました。
すると、若手の自分から見れば“神”のような存在だった当時の経営陣は解任。
「こんなことが起こるのか」と信じられない気持ちでした。
その後、私自身は2014年に急遽代表取締役に就任することになり、
訳も分からず株主総会や取締役会というものに関与することになりました。
その経験をする中で、定款というものの存在を知り、初めてわかったのです。
「取締役の選任は、(~省略~)過半数をもって行う」
「取締役の任期は、2年とする」
「代表取締役は、取締役の互選により定める」
なるほど、取締役は株主に選んでもらっている存在であって、
株主の意向にそぐわなければ、従業員の立場と違って解雇規制もなく、
文字通り「クビ」になる存在なのだなと。
それ以来、私の株主に対する見方が大きく変わりました。
「この人に嫌われてはいけない」と。
知らず知らずのうちに、株主の今日のご機嫌を気にするようになり、
嫌われないように立ち居振る舞い、経営判断するようになり、
挙句の果てには、株主の意向を理由に社員の意見を却下することもありました。
感覚的ですが、当時自分のエネルギーの30%くらいは
株主対応に使っていたのではないかと思います。
自分にも重要な決議事項を行う権利が欲しいと思っても、
株式を売買するのはあくまで「株主の意思」であって、取締役が行うものではない。
ましてや、自分が買い手として売買交渉に臨みたくても、そんな大金は持ち合わせていないし、
そんな話を持ち出した時点でクビにされるかもしれない…。
株主は強し。
日々のM&AやIPO、自社株買いなどのニュースも、そんなリアリティを持って見てみると、
また違った景色が見えてきます。
皆さんも、自社の株主構成についても、一度理解してみてはいかがでしょうか。
編集後記
「会社は誰のもの?」
これは永遠に語られ続けているテーマです。
法的には、間違いなく「株主のもの」です。
これは抗いようのない事実です。
しかし、「会社は株主の“ためのもの”」ではないと私は考えています。
現在は弊社も私のオーナー会社ですが、
「社会のためのもの」「従業員のためのもの」でありたいと思っています。
そのような会社の所有形態とはどんなものなのか。
私は、一生かけてその答えを模索していきたいと思います。
それでは、次回もお楽しみに!
執筆者プロフィール
株式会社シンカ
代表取締役社長
田中裕也
1981年生まれ。岩手県二戸市出身。一橋大学商学部卒。2004年、新卒でシンカに入社。
上場企業を中心に20年以上採用コンサルティングに従事。訪問社数は2500社を超える。
2014年、突如代表取締役を拝命。経営改革を経て、2017年にMBOを決断。
自社の経営改革の実体験から、現在は中小企業向けの組織改革・人事制度改革・
事業計画策定・新規事業立ち上げ、事業承継等の支援や、
持続可能な社会を目指して、地方で宿泊業へのチャレンジも実践している。