メールマガジン
『 真価と進化 』

Mail Magazine

← 一覧にもどる
2025.12.10号 VOL.313
物語化の功罪

こんにちは。株式会社シンカの山内と申します。

“You cannot change others or the past. You can change yourself and the future.”
ー他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。

カナダの精神科医、エリック・バーンの名言です。

ただ、過去そのものは変えられなくても、「解釈」を変えることは可能です。
キャリアカウンセリングにおける「ナラティブアプローチ」は、
出来事に対する自分のナラティブ(物語)を更新し、未来を生きやすくする方法です。
人間に備わっている、ある種の知恵のように感じます。

「あの経験があったから今の自分がいる」
そんな感覚が訪れたことのある方も多いはずです。

私自身、そう思えた10代の経験をきっかけに、大学では心理学を学びました。
シンカでの転職エージェント時代は、求職者のキャリアを伺いながら、
「点と点を線でつなぐ」瞬間にやりがいを感じていました。

また、企業の事業計画書の策定においても、歴史や背景を伺いながら、
物語として再構成している感覚を覚えた瞬間、「この仕事好きだな」と感じたことがあります。

一方で、行き過ぎた物語化には危うさもあります。
「物語化批判の哲学〈わたしの人生〉を遊びなおすために (講談社現代新書・難波優輝 著) 」では、
・人生を物語化しすぎると、却って心身に負荷がかかること
・物語は自己理解に役立つが、同時に独善的な自己語りにも陥りやすいこと
・他人語りをすることで、他人自身が解釈する自由を奪い取ってしまうこと
といった警鐘が鳴らされています。

現代は「物語化」が過剰に働いています。
・自己分析という名の物語化の強制
・SNSや広告内に流れる物語のなかで消費される感情
・MBTIなどの性格診断の型通りに自分を演じる行為
・アイドルグループメンバーの強いキャラクター化

本を読み進めながら、私自身、安易な物語化によって、相手への理解を
ショートカットしてしまっていたかもしれないと反省しました。

大企業を辞めた、離婚した、地方へ移住した‥‥、そんな話が仲間うちから出ると、
「囚われから解放されたんだね。おめでとう!ようこそこちら側へ!」といった、
歓迎ムードになることもあります。
そこにちょっとした違和感があったのは、あくまで私たちが勝手に描いた「物語」で
他人を解釈することへの抵抗感だったのだと気がつきました。

一度つくった物語に固執せず、必要なら手放す勇気をもつこと。
そして、他者のことも、自分の想定する物語で理解しようとするのではなく、
まずはそのまま理解しようと努めること。

後悔している過去、消したい過去、選べなかった過去は、
美談の物語化することなく、変えられない過去としてそのまま受け止めていきたいと思います。


編集後記

自分の物語から少し外に出る、という意味では、社会人歴がまもなく丸19年になるなかで、
これまで経験してこなかった種類の仕事のご相談をいただけていることです。

外側からそっと物語を広げていただけている感覚があり、とてもありがたいことだと感じています。

昔から、todo より tobeで物事を捉えるのが好きで、
表面的な役割ではなく、その人の「在り方」を見つめたいと思っています。
だからこそ、自分自身も、tobeで選んでもらえる人であると同時に、
todoも磨き続けていきたいと思います。

3歳になった娘は、YouTubeでマリオパーティーを見ながら、
ピーチ姫になりきってゲームの世界に入り込み、ジャンプやポーズを決めています。
これもまた、ひとつの「物語」なのかもしれません(笑)

それでは、次回もお楽しみに!

執筆者プロフィール

株式会社シンカ
ディレクター
山内綾子

1984年北海道札幌市生まれ。筑波大学人間学類心理学専攻卒。2007年、新卒でシンカに入社。
上場企業への採用コンサルティングや、エージェント事業の立ち上げに従事。
自社の経営改革の過程で、従業員の立場から、人事制度刷新や中期経営計画策定を経験し、
「我がごと経営」というサービスコンセプトを立案。
現在は、自社の新規事業開発と並行して、中小企業向けの採用支援をはじめ、
総務業務の改善・事業計画策定・人事制度改革・新規事業の立ち上げなどを支援。
子育てをしながら、自社の宿泊施設がある地方と東京を行き来し、地域通貨の運営にも取り組む。