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『 真価と進化 』

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2026.03.18号
手を汚さない加害者

こんにちは。株式会社シンカの山内と申します。

東日本大震災から、15年が経ちました。
友人の息子さんは、震災の日に生まれ、この春、中学を卒業します。
月日が経つのは、本当に早いものです。

2年半前、福島第一原発の見学を含むスタディツアーに参加しました。
当時は心の整理もつかず、メルマガに書くことができませんでしたが、
今回、当時感じたことをご紹介したいと思います。

廃炉作業が行われている1号機から4号機。
1000基を超える汚染水のタンク。
放射性物質の付着した、ナンバープレートの外れた多くの車両。

「ああ、私は当事者だ」

見学をするなかで、いたたまれない思いに駆られました。
自然に対して傲慢な、欲深い「人間」であることから、逃げ出したくなりました。

それでも、あれだけの大きな体験をしても、
道路と箱が先に用意されるまちづくりのプロセスは、
震災前と変わりがないようにも見えました。


また、中間貯蔵施設の敷地内を、地権者の方に案内していただきました。
その方は、津波でお父様、奥様、娘さん(次女)を亡くされた方です。
震災の翌日から、10年以上、人がいない町。
当時のまま、机の上に辞書が残る小学校の教室。
積み上がる除染袋。

「『電気を守ることは人の命を守ることだ』という東電職員からの言葉に、
『あんたら電気がないと生きていけないでしょ』と言われた気がした。
でも、よくよく考えてみると、そんなことを言わせているのは、
【電気を使っている自分たちだ】と思い始めた。」

その言葉が、胸に突き刺さりました。

圧倒的な被害者であるはずの方の口から出てきたのは、
「自分もまた加害者だった」という言葉でした。

推定880トン。取り出されたデブリは0.9グラム。

もし娘に、
「どうして、自分たちで片づけられないものを作ったの?」
と聞かれたら、私は、どう答えればよいのでしょうか。

「私は、自分では手を汚していない加害者だ。」

そう伝えるかどうかはわかりませんが、少なくとも、
「自分には関係ない」とは、もう言えないと思います。


編集後記

敷地を案内してくれた彼の最後の言葉が、救いでした。

「ここに来て、皆さんはきっと、明日から何ができるだろうと考えると思います。
でも、この社会の仕組みのなかで、いきなり全部変えるのは難しいですよね。

もやもやしますよね。だから、その“もやもや”を持ち帰ってください。

あるものを全部享受するのではなく、どこかで線引きをしてほしい。
それが、冷蔵庫は必要だけど電子レンジは必要ないね、ということでもいいと思います。」

あのとき感じた
消化しきれない“もやもや”は、
今も消えていません。

それでは、次回もお楽しみに!

執筆者プロフィール

株式会社シンカ
ディレクター
山内綾子

1984年北海道札幌市生まれ。筑波大学人間学類心理学専攻卒。2007年、新卒でシンカに入社。
上場企業への採用コンサルティングや、エージェント事業の立ち上げに従事。
自社の経営改革の過程で、従業員の立場から、人事制度刷新や中期経営計画策定を経験し、
「我がごと経営」というサービスコンセプトを立案。
現在は、自社の新規事業開発と並行して、中小企業向けの採用支援をはじめ、
総務業務の改善・事業計画策定・人事制度改革・新規事業の立ち上げなどを支援。
子育てをしながら、自社の宿泊施設がある地方と東京を行き来し、地域通貨の運営にも取り組む。